《戦没学生のメッセージ》終演致しました
コンサートにはたくさんのお客様がいらしてくださいました。ありがとうございました。
3時間を越える長丁場のコンサートでしたが、演奏だけでなく、解説などを交えたり、スクリーンに資料などを映し出したり、作曲家の大中恩先生、油画家の野見山暁治先生の戦時中のお話を聞けたりと、とても貴重な企画でした。
私はゲネプロの一部と、本番はモニター越しでしか聴けませんでしたが、作曲者と演奏者、何より、この演奏会を企画した先生方、スタッフ、ご遺族…たくさんの人たちの思いがひとつになった、とてもよい演奏会でした。
それぞれの作品から、演奏者を通して、まさに作曲者たちの様々なメッセージが聴こえてくるようでした。
戦没学生たちの生きた証、学んだ証、曲に込められたメッセージを、現代に生きる私たちが再現するという、本当に有難い機会をいただき感謝しています。
これからも資料発掘や研究が進み、また新たに演奏できる曲が増えること、そして争いのない平和な世界を祈ります。
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私が歌った、葛原守さんの『かなしひものよ』は、詩もシンプル、楽譜を一目見た段階では、譜面もとてもシンプルで、特にテンポや強弱の指示もありませんでしたが、音にしてみたら一気に情景が浮かび上がってきて驚きました。
シンプルな旋律は、ピアノの伴奏と一緒になることで、生き生きと詩の情景を描き出したのでした。
葛原さんはとても几帳面に楽譜を清書する方だったそうなのですが、この曲に限ってはメモのような状態の譜面だったので、まだ構想段階の曲だったのかもしれません。
自筆譜では読み取りにくかった音符や詩の文字もありましたが、再演にあたり、色々な人たちの経験や知識が集まって、今回浄書されました。
テンポ設定や曲想は、あまり余計なことはせず、でも音楽の流れなどとあわせて、情感が表現できるように…と思っていました。今回ピアニストを務めてくださった松岡あさひさんと相談しながら、リハーサルを重ねました。
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詩はおそらく自作とのこと。
「かなしひものよ わかれとは」という言葉がたびたび繰り返されます。「わかれ」は、戦争での別れのことだと解釈して歌いました。
『お国のために』と喜び勇んで出征していく人も多かった中、葛原さんは出征を拒んでいたそうです。
シンプルでありながら、ところどころに見られる細かな和声の変化から、波のように時々押し寄せる衝動的な哀しみを、私は感じました。
基本となっている長調の美しい音楽が、余計にその哀しみを助長しているよう。
どんな気持ちで作曲したんだろうと想像すると、胸を締め付けられる思いです。
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他の皆さんの演奏も、丁寧に作品と向き合ってこられたのが伝わってきました。
作曲者のメッセージを、現代に生きるわたしたちが汲み取り再現するという、大変意義深いコンサートでした。
今回の企画は、明日の「News 23」(TBS)、8月15日の「おはよう日本」(NHK)にて取り上げられるそうです。ご覧いただけましたら幸いです。
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